yak shaving life

遠回りこそが最短の道

LeanとDevOpsの科学 を読んだ

なぜ読もうと思ったか

オススメしている人が何人か身近にいたので、なんとなく。

どのような本か

超意訳すると、「IT部門のパフォーマンスの高さは、組織全体の業績と高い相関をもつ」と誰もがいうが、大抵何の根拠もない戯言にすぎない。なので、学術的調査・分析方法を用いてガチで研究してみた。そしたら、「ソフトウェアデリバリのパフォーマンスが組織全体の業績に重要な影響を及ぼす」ことが判明したぜ!詳しく説明するからみんなも参考にしてくれよな!な本。ただし実際はもっと堅い。(そして戯言云々は著者の台詞ではない。その辺はご愛嬌)

書評というか感想

思ったよりすごい本だった。

まず、普通のDevOpsとか継続的デリバリの書籍と違うのは、学問の世界で用いられるような厳格な調査研究方法を用いていること。そして、DevOpsやリーンマネジメントが組織の収益性、市場占有率、生産性に良い影響を与える(本書では「予測」、より厳密には「推計予測(inferential prediction)」という言葉を使っている)こと。開発組織のパフォーマンスの測定方法や改善の仕方、さらには組織文化にまで踏み込んでいて、尚且つそれらの相関関係や予測関係もまた全て厳格な調査研究によって分析していることである。

自分でも何言ってるのか分からなくなってきたけど、本文もこのような調子なので結構堅いです。ちょっと読みづらめ。でも内容は本当に素晴らしい。

ソフトウェアデリバリのパフォーマンスを計測するための方法や、その計測結果が組織のパフォーマンス(収益性、生産性、市場占有率)にどのような相関があるか、というのが主題。

前半(〜11章)は組織のパフォーマンスを上げるためのプラクティスと調査結果が解説されていて、めちゃくちゃ読み応えある。後半(12章〜)はどのように調査・分析を行なったのかの説明という感じで、本当は読んだ方がいいけどしんどい人は読み飛ばしてもいいかも。前半の内容がなぜ信頼できるのかを示しているので、大事と言えば大事。

実際本書に書いてあるプラクティスについて言及すると文字数がいくらあっても足りないので、読んでくださいとしか言えません。。が、ものすごくざっくり言うと、「DevOpsとリーンマネジメントのプラクティスをやればソフトウェアデリバリのパフォーマンスのデリバリが上がり、そして組織全体のパフォーマンスも上がる」と言うことなのでDevOpsとリーンをやりましょう。実際には組織文化、継続的デリバリ、リーダーシップ等についてもプラクティスと調査結果があって、その辺もすごく面白いのだけれども。

読んでいると話が色々広がってだんだん訳わからなくなってくるのですが、安心してください。242, 243ページに見開きで全体の相関図が書いてあります。本書の内容が一つの図に全て詰まっているので最終的にはこの図を頭に叩き込めばOK。私も叩き込みます。結構ややこしいけど。

そして、読んでて気づいたけどリーン開発とかリーンマネジメントの本読んだことない。正直あまり分かってない。浅学非才が身に染みているので他にも色々読まなければ。。

この本は現場のエンジニアが読むのももちろん効果的だけれども、マネージャや開発組織を横断的にみているような技術スペシャリスト、ひいては経営者も読んだ方がいいと思う。マジで。そのくらいためになる本です。ただ結構難しいと言うかややこしいので、一回読んだだけでは全部は頭に入ってこない感あります。もう半分以上忘れた。もう一回読まないとなあ。

しかしたまたま手に取った本がすごい本だったので驚いています。もしかして、みんな知ってた…?この本がすごいって、有名…?最近技術書あまり読んでなかったのがよくなかったのかなあ。完全に名著だと思うんだけど全然知らなかった。これから周りにオススメしていきたい。

ちなみに、この本が書かれるきっかけとなったレポート(State of DevOps Report)の本書執筆時の最新版である2017年版はここからダウンロードできるようです。本書には調査研究の生データは載ってなかったけど、こっちには載ってるんだろうか。ちょっと気力がなくて読んでない。2020年版もあるみたいだからそっちを見た方がいいのかもしれない。積読をあといくつか消化したら読んでみよう。

最後に一つ、「組織文化をどう変えていくか」という節が非常に興味深かったので、ここだけ引用しておきたい。

組織文化を変えていく上でまず最初にやるべきなのは、関係者の思考方法を変えることではなく、関係者の言動、つまり皆が何をどう行うかを変えることだ

これはなるほどなーと思った。この言説をもとに、本書では「リーンとアジャイルのプラクティスを実践すれば組織文化に好影響を与えられる」という仮説を掲げ、技術的プラクティスと管理のプラクティスが組織文化にもたらす影響を測定したらしい。結果としてこの二種のプラクティスの実践により文化の改善を図れると。

この辺りの方法論は開発に限らず色々応用できそう。とにかく興味深い本なので折に触れて何度も読み返したい。