yak shaving life

遠回りこそが最短の道

「なぜ?」から始める現代アート を読んだ

なぜ読もうと思ったか

著者の長谷川祐子氏は金沢21世紀美術館の館長で、東京都現代美術館の元チーフキュレーター。この人の書いた現代美術の解説本を読んでみたいと思ったので。

どのような本か

世界的に有名なアーティストの作品を例に挙げながら、現代アート鑑賞のポイントをガイドしてくれる本。ところどころで美術史や関連する歴史、その他必要な知識を解説しているので前知識が少なくても読める。

書評というか感想

かなり読み応えのある本だった。

著名な現代美術のアーティスト(一部建築家含む)が25人くらい主要な作品と共に紹介されていて、それだけでもだいぶありがたい上に、作品を鑑賞するためのポイントが周辺知識とともに解説されている。時にその周辺知識について深掘りしていてそれがまた勉強になった。各章で着目するポイントを変えているところも面白い。

一方、ちょっとこの人の主観入りすぎじゃない?と思う部分も散見されて、うーんどうなんだろうと思っていたが、最近になってようやく気づいたことがある。アートに正解はないので、誰の書いた本であろうと著者の主観がガッツリ入ってくるのである。村上隆や小山登美夫の書籍ではアートを取り巻く社会の構造が解説されていて、なるほどなーと思いながら読んだものだけど、今思えばやはり、多くは主観に基づいて書かれていたんだろうなと思う。極論すれば世の中全部そうなのかもしれないけど、美術という分野ではそれが顕著なのかなーと。

そういうわけで、「世の中全てポジショントーク」だとは常々思っているわけですが、ことアートにおいてはより一層「全ては主観である」という意識を持っておく必要があるなと思った。そう考えるとこの本が特段主観的すぎるということは全くなくて、シンプルに良い本です。現代アート分かるようになりたい〜というアート初心者(つまり僕のような人)にはだいぶオススメです。

データ指向アプリケーションデザイン を読んだ

なぜ読もうと思ったか

発売当初から話題になっていたしいつか読みたいと思っとは前々から思っていたのと、Redis ClusterやGoogle Spannerについて調べていて分散DBを学びたくなったので。

どのような本か

「アプリケーションデザイン」と題されてはいるものの、基本的にはDBと分散システムの本。なので分散データベースについての記述が多い。でもRDBの話もちゃんとあります。

書評というか感想

すごい本だった…。

何がすごいってまず分量がすごい。前半は気合入れて読んだけど、後半は隙間時間で読んでいたので読了までに数ヶ月かかってしまった。内容も濃いので流し読みだと全く頭に入ってこず、何回も読み直したりしていたらだいぶ時間がかかってしまった。

そして内容もすごい。すごいすごい言いすぎて語彙力の貧しさが露呈してしまっているけど、すごいと思ったんだからすごいのである。扱っているトピックが広く、さながらDBと分散システムの教科書といった感じ。

いわゆるWeb系のエンジニアで、扱っているシステムが小〜中規模な場合、分散システムを触る機会もあまりないと思う。自分もそうだった。そういう人でも第1部「データシステムの基礎」は勉強になります。データモデルやストレージの話、あとは広く浅くいろいろな話題に触れている感じ。

第2部「分散データ」は分散システムに馴染みがない人(僕とか)だとちょっと読むのが大変かもしれない。全てを理解しようとして読むとかなり気合が必要なので、気になったところだけ深く読んであとはさらっと読んだ方が読了するにはいいかもしれない。ただし7章「トランザクション」は本当にいい話なのでここはじっくり読んだ方が良い。RDBの理解を深めることにもなるので是非。

第3部「導出データ」はMapReduceの話とイベントストリームの話が多い。僕はHadoopも触ったことがないしMapReduceとか正直なんとなくしか知らなかったけど、ここを読んで多少理解できた気がする。多少だけど。イベントストリームは今後のトレンドというか、疎結合でスケーラブルなシステムを作る上で避けては通れないのである程度詳しくなっておきたいところ。そして最後の第12章はちょっと毛色が違って、筆者が考える「データシステムの将来」について述べられている。これまた興味深い。

全体的に、実装については触れられていないのでコードは載っていない。でもかなり詳細なところまで説明があるので「抽象的すぎて分かりにくい」ということはない。また実際のプロダクトがどういう設計やアルゴリズムを採用しているか具体例を挙げてくれるのでイメージがつきやすい。

僕自身は分散システムについては本当に無知なので、学びが多すぎて頭が渋滞してしまい読むのにだいぶ時間がかかった。素晴らしい本だけど読むの疲れた。というのが正直な感想。もうちょっと集中して読む環境を整えればよかった。これは隙間時間で読む本ではない…。分散システムについて詳しい人がこの本を読んだ感想を聞いてみたい。

また、よく使っているRDBトランザクションがいかに強力で、そこにどれだけ依存しているのか認識できてよかった。逆にいうと、RDB以外のデータベースをガッツリ使ってアプリケーションを作ろうと思うと設計思想をまるっきり変えなければならない。今までFirestoreとかを雑に使ってアプリを書いたことはあるけど、プロダクションレベルのサービスを作ろうと思うとマインドセットからまるっと変えないといけない気がする。そのくらいRDBトランザクションは強力。DynamoDBとかCassandraとかを使っている例はよく聞くけど、市井のエンジニアたちは皆そこまで理解した上で設計されているんだろうか。

無知の知というか、俺って何にも知らないな〜という気持ちにさせてくれたのでありがたい。DBとか分散システムに対する興味が深まったので、今後は関連する書籍を読んだりNoSQLやNewSQLを使って遊んでいきたい。最近はDockerでなんでもサクッと構築できるので便利な世の中だ。

いやーそれにしても素晴らしい本だった。しかし書いてあることの何割くらい理解できたんだろうか。またもう一回読んで復習しないとなあ。

構図がわかれば絵画がわかる を読んだ

なぜ読もうと思ったか

絵画がわかるようになりたいので。

どのような本か

有名な作品を例に、構図という観点で絵画を解説している。点や線の構図、形や光、色に至るまで、構図によって生まれる効果についてなど。

書評というか感想

面白かった。

まず有名な絵画を例に挙げて解説しているのでシンプルに勉強になった。内容自体も結構面白くて、例えば帯にムンク「叫び」についての簡単な説明があるが、こんな感じで形や色などが生み出す効果について述べられている。三角形だと安定して見えるとか、垂直線は重力を際立たせ全体のバランスを取るとか。興味深い内容が多い。

一方、絵画や美術の専門書という感じではないし、これって本当にそんな効果あるのかな?著者の個人的な見解では?と思うような部分も随所に見受けられる。とはいえ自分も専門知識は皆無なのでその正当性を判断できる能力はないのだけれども…。ちゃんと絵画を学んでいる人が読んだらどう思うのかはちょっと気になるところ。

また、最後の方は完全に脱線していて、人体についての解説とか仏像の話、釈迦の一生などにまあまあの紙面が割かれている。絵画の構図とほぼ関係なくなっちゃった!と澤部にツッコまれそうなそうな勢い。まあ、美術・アートに関するアレコレを書いている本だと思って読めば非常に良い本だと思う。僕はアートを勉強するために読んでいるので、いろいろ参考になって良かった。同じような人には結構オススメ。

タイトルから絵画の専門書だと期待して読むとガッカリするかもしれない。

世界ダークツーリズム を読んだ

なぜ読もうと思ったか

ダークツーリズム入門を読んだことだしもう一冊ダークツーリズム本を読んでみようと思った。

どのような本か

日本含む世界のダークツーリズムスポットの紹介・解説。

書評というか感想

基本的にダークツーリズム入門と同じ。それぞれのスポットの解説が数ページずつという感じ。

バリ島やサイパンのような有名リゾートも実はダークツーリズムスポットだというのは知らなかった。無知で恥ずかしい限り。ウクライナのホロドモールや南アフリカのロベン島刑務所など知らなかった事象・場所もあり勉強になった。

人類の負の遺産、闇の歴史を知ることは大変意義深いことだと改めて感じさせてくれる良い本。ただし若干気分が沈むのは間違いないのでそういうのが苦手な人は注意が必要かもしれない。

これは完全に余談だけど、一部のスポットについてはダークツーリズム入門と解説が全く同じだった。本書の方が先に刊行されてるので、あっちの方がこちらと同じというのが正しいか。

どうやら同じ編集プロダクションが共通して提供している部分があったようだ。スポットごとに書き手が違うこともあり、こういう風に複数の書籍に提供する場合もあるんだなあ。本の作り方にも色々あるな。ちょっとニッチな分野だったりすると知見が偏るだろうし、よくあることなのかもしれない。知らんけど。

ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅 を読んだ

なぜ読もうと思ったか

奥さんが読んでたので自分もなんとなく…というのは本音すぎるのでもうちょっとそれっぽいことをいうと、人間の負の面に惹かれるからです。悲劇を繰り返さないように、という教訓を得るためという目的ももちろんあるけれども、それ以前にダークなものにはどうしても惹かれてしまう。なので読んでみたくなった。

どのような本か

ダークツーリズム入門とはいうものの、そもそもそれ何なん?という人のために引用します。

"ダークツーリズム"とは、一言で言うと、戦争や災害をはじめとする悲劇の記憶をめぐる旅のこと。

ということだそうです。日本・欧米・アジア/アフリカ/オセアニアの3カテゴリに分けてダークツーリズムスポットが紹介されています。

書評というか感想

非常に興味深い本だった。

にわかには信じられないような悲劇が世界中で起こっていて、それは自然災害や核関連の事故だったりするし、また差別や貧困、戦争、そして虐殺であったりする。

有名どころで言えば、日本だと福島の原発関連施設や広島の平和記念公園、海外だとアウシュビッツ強制収容所ベルリンの壁チェルノブイリアンネ・フランクの家などがある。この辺りはご存知の方が多いとは思うが、聞いたこともなかった場所や事件の方が衝撃的だった。

広島の大久野島、沖縄のクブラバリ、ボリビアポトシ銀山ルワンダのムランビ虐殺記念館など、何が起こったのか文章で読んでいるだけで気分が悪くなるほどで、どれも凄惨という他ない。普段生活していたら考えも及ばないようなことが現実に起こっていて、しかもそれら全てが大体数十年以内の出来事だというから驚きを隠せなかった。場合によっては自分が生まれてから起こっているわけで、これが同じ地球で起きていることなのかと思わずにはいられない。

読んで良かったと思う。平和な日々に改めて感謝するとともに、このような負の歴史を忘れてはいけない。忘れられないために、繰り返さないために、歴史を残すためにダークツーリズムスポットは作られている。行ってみたいような、行きたくないような、でもやっぱり行って、見て、体験した方が良いんだろうなと思う。ダークツーリズムをメインの目的にするかどうかはさておき、旅行時にダークツーリズムスポットを組み込むことは積極的にしていきたいと思った。

個人的には興味深い本だったけど、こういうのが苦手な人は読まない方がいいと思う。自分は耐性ある方だと思うが、それでもまあまあ胸糞が悪かった。ルワンダ虐殺とかエグすぎて厳しい…厳しいけど気になるのでネットで詳細を調べたりしてまた心を抉られる。みたいなことを何度か繰り返していた。人間とは環境次第でこうも残忍になれるなだという事実を認識できたのは大きな収穫だったけど、メンタルが若干やられた気もするのでご利用は計画的に。あ、本書にすごく生々しい表現や写真が載っているというわけではないです。ただただ事実として心にくるものがあるということです。

他にもいくつかダークツーリズム本があるようなので、あと1、2冊くらいは読みたいなあ。

ゴールデンカムイ全話読んだ

ゴールデンカムイが全話無料公開中だという怪しげな情報を仕入れたので、やれやれまた漫○村的な違法サイトか、クリエイターにはちゃんとお金落とそうぜ…などと思いながらも一応リンクを開いたら「となりのヤングジャンプ」!!!!公式…ッッ!!!!というわけで読みました。全話。最近の集英社さんはほんま太っ腹やでえ…。ありがたや、ありがたや…(クリエイターにお金を落とすのは別の機会にやりますんで…ッッ!!)

面白い作品だとは聞いていたけど、思ったよりずっと面白かったです。最近アイヌについて少し興味があるというのも相まって、ものすごい勢いで読んでしまった。せっかくなので雑な感想を書いておく。

  • 出てくる知識の量が半端ない。アイヌの関係者達が舌を巻くほどらしい。一体どれだけの取材や調査をすればこんな作品が書けるのだろう。想像すらできない。
  • シリアスとギャグのバランスが素晴らしい。物語が進むに連れて展開はシリアスでダークになっていくし、登場人物も増えてシナリオも複雑になる。読むのが辛くなってもおかしくないところだが、その分ギャグ要素も強めることでうまく均衡を保っているように見える。いやむしろ、おふざけが勝っている節すらあるけど。なんにせよ、よくよく考えるとかなりハードな内容の漫画なのに、読んでいて暗くなったり辛くならないのはギャグパートの素晴らしさ故だと思う。もちろん杉元やアシ(リ)パが明るくて前向きな性格をしてるとかそういうのもあるとは思いますよ。ええ。でもギャグは大事。
  • まぁまぁの頻度で人が死ぬし、スプラッタ的な描写もある。なのに雰囲気が重苦しくないし、極悪非道な脱獄囚たちもなんだかお茶目で可愛らしかったりする。どうやってこの雰囲気を作り出しているんだろうなあ。すごいの一言。
  • スプラッタ的だけど見てて楽しい漫画、というと一番思い浮かぶのは北斗の拳なのだけど、作者の方も花の慶次が好きだとどこかで言っていたような気がする。原哲夫先生は偉大だ。
  • ストーリーがめちゃくちゃ良くできてて、しかも伏線の貼り方と謎解きのペースが絶妙。進撃の巨人ばりによく考えられた構成で感動した。良い
  • 登場人物が皆それぞれの思いや正義を抱えて必死で生きている。脱獄囚も含め。そういう意味で一人ひとりのキャラがすごく立っていて、それがこの漫画の大きな魅力なのだと思う。同じような感覚をジョジョにも感じている。
  • 「ジジイがめちゃ強くてカッコいい漫画=面白い」の法則ってあると思う。
  • もう一回一話から全部読み直したい。
  • ゴールデンカムイグルメ漫画

時の流れが早いような遅いようなそんな感じがしている

9月である。

東京に住んでいると、パンデミックが収まる気配がないどころか今が一番ひどい状態のように思える。

必然的に外出の機会は減り、子供を外に連れていくのも難しい。自分自身も人との会話が少ないからかどうも調子が出ない。

そんな風に思っていたらもう2021年も3分の2が過ぎてしまった。毎日が長く感じるけれど、時の流れが早い。なんとなく不思議な感覚に陥っている。うーん。いい加減この状況に慣れても良さそうなものだけど、やっぱりどこか気分が落ちている気がする。どうしたものかなあ。

年始に個人OKRを立てたものの進捗が芳しくない。ブログを何でもいいから100記事書かなければいけないのだが現時点で30記事しか書いていない。4ヶ月で70記事はなかなかのハイペースだな…。何でもいいのだから140文字くらいの呟きをここに書いてしまえばいいのかもしれない。

読書、個人開発、英語、コミュニティ活動etc。な〜んか何一つ達成できなさそうな気がしないでもないけど、今からでもなんとか達成に向けて頑張ってみよう。読書は最後まで読まずに微妙に読んでる本が多すぎるのが問題な気がするな。ガッと読み切ってバッと読書感想文を書いてパパッと公開するようにしないとなあ。

…とまあ最近考えたことをダラダラと書いてみた。8ヶ月何をやってたのかと聞かれると何もしていない気もするしそれなりに色々してたような気もするし。総じてちょっと落ち込み気味であることは否めないけれども。むーん。子供が元気に育っているだけで十分!というのも正直な気持ちではあるけれども、やはり「人生の脇役になる」のが子育てみたいな考えにはどうしてもなれない(というかなる気がない)ので、自分がやりたいことをもう少し追求していかないといけないのかもしれない。

そういえば最近、生まれてはじめて大河ドラマを観た。現代美術の勉強をしようと思い立って、美術を理解するには宗教と歴史を知る必要があると分かり、仏像や古美術、西洋美術、日本史などを雑に勉強しているうちに幕末〜近代について全然理解できていないことに気づき、大河ドラマが良い教材になるのではないかというところに行き着いた(奥さんが)。ので過去作品を観たり、今やっている「青天を衝け」を観たりしている。これが思いの外面白くて勉強にもなるので非常に良いです。大河ドラマ観たことない人、オススメです。話数もやたら多くて暇つぶしにもバッチリなので是非。なお可処分時間がみるみる吸い取られるとも言います。ご利用は計画的に。

あと、観てて分からん言葉や状況が多すぎるので都度Wikipediaで調べていてインターネットの素晴らしさに触れている。てかこんなのネットがなかったらさっぱり意味が分からん気がする…。インターネットというよりWikipediaが素晴しいのかも知れないけど。皆さん募金しましょう。我々の自由なインターネットを守るのです。(?)

何の話やねん、という感じですけど日記って本来こういうもんだよな、うん。頑張ってあと70記事書くぞー。