yak shaving life

遠回りこそが最短の道

構図がわかれば絵画がわかる を読んだ

なぜ読もうと思ったか

絵画がわかるようになりたいので。

どのような本か

有名な作品を例に、構図という観点で絵画を解説している。点や線の構図、形や光、色に至るまで、構図によって生まれる効果についてなど。

書評というか感想

面白かった。

まず有名な絵画を例に挙げて解説しているのでシンプルに勉強になった。内容自体も結構面白くて、例えば帯にムンク「叫び」についての簡単な説明があるが、こんな感じで形や色などが生み出す効果について述べられている。三角形だと安定して見えるとか、垂直線は重力を際立たせ全体のバランスを取るとか。興味深い内容が多い。

一方、絵画や美術の専門書という感じではないし、これって本当にそんな効果あるのかな?著者の個人的な見解では?と思うような部分も随所に見受けられる。とはいえ自分も専門知識は皆無なのでその正当性を判断できる能力はないのだけれども…。ちゃんと絵画を学んでいる人が読んだらどう思うのかはちょっと気になるところ。

また、最後の方は完全に脱線していて、人体についての解説とか仏像の話、釈迦の一生などにまあまあの紙面が割かれている。絵画の構図とほぼ関係なくなっちゃった!と澤部にツッコまれそうなそうな勢い。まあ、美術・アートに関するアレコレを書いている本だと思って読めば非常に良い本だと思う。僕はアートを勉強するために読んでいるので、いろいろ参考になって良かった。同じような人には結構オススメ。

タイトルから絵画の専門書だと期待して読むとガッカリするかもしれない。

世界ダークツーリズム を読んだ

なぜ読もうと思ったか

ダークツーリズム入門を読んだことだしもう一冊ダークツーリズム本を読んでみようと思った。

どのような本か

日本含む世界のダークツーリズムスポットの紹介・解説。

書評というか感想

基本的にダークツーリズム入門と同じ。それぞれのスポットの解説が数ページずつという感じ。

バリ島やサイパンのような有名リゾートも実はダークツーリズムスポットだというのは知らなかった。無知で恥ずかしい限り。ウクライナのホロドモールや南アフリカのロベン島刑務所など知らなかった事象・場所もあり勉強になった。

人類の負の遺産、闇の歴史を知ることは大変意義深いことだと改めて感じさせてくれる良い本。ただし若干気分が沈むのは間違いないのでそういうのが苦手な人は注意が必要かもしれない。

これは完全に余談だけど、一部のスポットについてはダークツーリズム入門と解説が全く同じだった。本書の方が先に刊行されてるので、あっちの方がこちらと同じというのが正しいか。

どうやら同じ編集プロダクションが共通して提供している部分があったようだ。スポットごとに書き手が違うこともあり、こういう風に複数の書籍に提供する場合もあるんだなあ。本の作り方にも色々あるな。ちょっとニッチな分野だったりすると知見が偏るだろうし、よくあることなのかもしれない。知らんけど。

ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅 を読んだ

なぜ読もうと思ったか

奥さんが読んでたので自分もなんとなく…というのは本音すぎるのでもうちょっとそれっぽいことをいうと、人間の負の面に惹かれるからです。悲劇を繰り返さないように、という教訓を得るためという目的ももちろんあるけれども、それ以前にダークなものにはどうしても惹かれてしまう。なので読んでみたくなった。

どのような本か

ダークツーリズム入門とはいうものの、そもそもそれ何なん?という人のために引用します。

"ダークツーリズム"とは、一言で言うと、戦争や災害をはじめとする悲劇の記憶をめぐる旅のこと。

ということだそうです。日本・欧米・アジア/アフリカ/オセアニアの3カテゴリに分けてダークツーリズムスポットが紹介されています。

書評というか感想

非常に興味深い本だった。

にわかには信じられないような悲劇が世界中で起こっていて、それは自然災害や核関連の事故だったりするし、また差別や貧困、戦争、そして虐殺であったりする。

有名どころで言えば、日本だと福島の原発関連施設や広島の平和記念公園、海外だとアウシュビッツ強制収容所ベルリンの壁チェルノブイリアンネ・フランクの家などがある。この辺りはご存知の方が多いとは思うが、聞いたこともなかった場所や事件の方が衝撃的だった。

広島の大久野島、沖縄のクブラバリ、ボリビアポトシ銀山ルワンダのムランビ虐殺記念館など、何が起こったのか文章で読んでいるだけで気分が悪くなるほどで、どれも凄惨という他ない。普段生活していたら考えも及ばないようなことが現実に起こっていて、しかもそれら全てが大体数十年以内の出来事だというから驚きを隠せなかった。場合によっては自分が生まれてから起こっているわけで、これが同じ地球で起きていることなのかと思わずにはいられない。

読んで良かったと思う。平和な日々に改めて感謝するとともに、このような負の歴史を忘れてはいけない。忘れられないために、繰り返さないために、歴史を残すためにダークツーリズムスポットは作られている。行ってみたいような、行きたくないような、でもやっぱり行って、見て、体験した方が良いんだろうなと思う。ダークツーリズムをメインの目的にするかどうかはさておき、旅行時にダークツーリズムスポットを組み込むことは積極的にしていきたいと思った。

個人的には興味深い本だったけど、こういうのが苦手な人は読まない方がいいと思う。自分は耐性ある方だと思うが、それでもまあまあ胸糞が悪かった。ルワンダ虐殺とかエグすぎて厳しい…厳しいけど気になるのでネットで詳細を調べたりしてまた心を抉られる。みたいなことを何度か繰り返していた。人間とは環境次第でこうも残忍になれるなだという事実を認識できたのは大きな収穫だったけど、メンタルが若干やられた気もするのでご利用は計画的に。あ、本書にすごく生々しい表現や写真が載っているというわけではないです。ただただ事実として心にくるものがあるということです。

他にもいくつかダークツーリズム本があるようなので、あと1、2冊くらいは読みたいなあ。

ゴールデンカムイ全話読んだ

ゴールデンカムイが全話無料公開中だという怪しげな情報を仕入れたので、やれやれまた漫○村的な違法サイトか、クリエイターにはちゃんとお金落とそうぜ…などと思いながらも一応リンクを開いたら「となりのヤングジャンプ」!!!!公式…ッッ!!!!というわけで読みました。全話。最近の集英社さんはほんま太っ腹やでえ…。ありがたや、ありがたや…(クリエイターにお金を落とすのは別の機会にやりますんで…ッッ!!)

面白い作品だとは聞いていたけど、思ったよりずっと面白かったです。最近アイヌについて少し興味があるというのも相まって、ものすごい勢いで読んでしまった。せっかくなので雑な感想を書いておく。

  • 出てくる知識の量が半端ない。アイヌの関係者達が舌を巻くほどらしい。一体どれだけの取材や調査をすればこんな作品が書けるのだろう。想像すらできない。
  • シリアスとギャグのバランスが素晴らしい。物語が進むに連れて展開はシリアスでダークになっていくし、登場人物も増えてシナリオも複雑になる。読むのが辛くなってもおかしくないところだが、その分ギャグ要素も強めることでうまく均衡を保っているように見える。いやむしろ、おふざけが勝っている節すらあるけど。なんにせよ、よくよく考えるとかなりハードな内容の漫画なのに、読んでいて暗くなったり辛くならないのはギャグパートの素晴らしさ故だと思う。もちろん杉元やアシ(リ)パが明るくて前向きな性格をしてるとかそういうのもあるとは思いますよ。ええ。でもギャグは大事。
  • まぁまぁの頻度で人が死ぬし、スプラッタ的な描写もある。なのに雰囲気が重苦しくないし、極悪非道な脱獄囚たちもなんだかお茶目で可愛らしかったりする。どうやってこの雰囲気を作り出しているんだろうなあ。すごいの一言。
  • スプラッタ的だけど見てて楽しい漫画、というと一番思い浮かぶのは北斗の拳なのだけど、作者の方も花の慶次が好きだとどこかで言っていたような気がする。原哲夫先生は偉大だ。
  • ストーリーがめちゃくちゃ良くできてて、しかも伏線の貼り方と謎解きのペースが絶妙。進撃の巨人ばりによく考えられた構成で感動した。良い
  • 登場人物が皆それぞれの思いや正義を抱えて必死で生きている。脱獄囚も含め。そういう意味で一人ひとりのキャラがすごく立っていて、それがこの漫画の大きな魅力なのだと思う。同じような感覚をジョジョにも感じている。
  • 「ジジイがめちゃ強くてカッコいい漫画=面白い」の法則ってあると思う。
  • もう一回一話から全部読み直したい。
  • ゴールデンカムイグルメ漫画

時の流れが早いような遅いようなそんな感じがしている

9月である。

東京に住んでいると、パンデミックが収まる気配がないどころか今が一番ひどい状態のように思える。

必然的に外出の機会は減り、子供を外に連れていくのも難しい。自分自身も人との会話が少ないからかどうも調子が出ない。

そんな風に思っていたらもう2021年も3分の2が過ぎてしまった。毎日が長く感じるけれど、時の流れが早い。なんとなく不思議な感覚に陥っている。うーん。いい加減この状況に慣れても良さそうなものだけど、やっぱりどこか気分が落ちている気がする。どうしたものかなあ。

年始に個人OKRを立てたものの進捗が芳しくない。ブログを何でもいいから100記事書かなければいけないのだが現時点で30記事しか書いていない。4ヶ月で70記事はなかなかのハイペースだな…。何でもいいのだから140文字くらいの呟きをここに書いてしまえばいいのかもしれない。

読書、個人開発、英語、コミュニティ活動etc。な〜んか何一つ達成できなさそうな気がしないでもないけど、今からでもなんとか達成に向けて頑張ってみよう。読書は最後まで読まずに微妙に読んでる本が多すぎるのが問題な気がするな。ガッと読み切ってバッと読書感想文を書いてパパッと公開するようにしないとなあ。

…とまあ最近考えたことをダラダラと書いてみた。8ヶ月何をやってたのかと聞かれると何もしていない気もするしそれなりに色々してたような気もするし。総じてちょっと落ち込み気味であることは否めないけれども。むーん。子供が元気に育っているだけで十分!というのも正直な気持ちではあるけれども、やはり「人生の脇役になる」のが子育てみたいな考えにはどうしてもなれない(というかなる気がない)ので、自分がやりたいことをもう少し追求していかないといけないのかもしれない。

そういえば最近、生まれてはじめて大河ドラマを観た。現代美術の勉強をしようと思い立って、美術を理解するには宗教と歴史を知る必要があると分かり、仏像や古美術、西洋美術、日本史などを雑に勉強しているうちに幕末〜近代について全然理解できていないことに気づき、大河ドラマが良い教材になるのではないかというところに行き着いた(奥さんが)。ので過去作品を観たり、今やっている「青天を衝け」を観たりしている。これが思いの外面白くて勉強にもなるので非常に良いです。大河ドラマ観たことない人、オススメです。話数もやたら多くて暇つぶしにもバッチリなので是非。なお可処分時間がみるみる吸い取られるとも言います。ご利用は計画的に。

あと、観てて分からん言葉や状況が多すぎるので都度Wikipediaで調べていてインターネットの素晴らしさに触れている。てかこんなのネットがなかったらさっぱり意味が分からん気がする…。インターネットというよりWikipediaが素晴しいのかも知れないけど。皆さん募金しましょう。我々の自由なインターネットを守るのです。(?)

何の話やねん、という感じですけど日記って本来こういうもんだよな、うん。頑張ってあと70記事書くぞー。

誰がアパレルを殺すのか を読んだ

なぜ読もうと思ったか

誰がアパレルを殺すのか気になったので。

どのような本か

時は2017年。国内アパレル業界はかつてない不振に喘いでいる。大手アパレル企業の売り上げは軒並み減少しており、店舗やブランドの閉鎖も相次いでいる。さらにはアパレルともちつもたれつの百貨店業界も危機的状況にある。

アパレル産業のこのような衰退はいったい何故起こったのか、いつから衰退は始まったのか。そして今、アパレルはどうなっているのか。未来はあるのか。

そんな感じの本です。

書評というか感想

面白かった。サプライチェーンの解説から始まり、戦後のアパレル産業の勃興、華々しいいわゆる「黄金期」から構造を転換できず業界全体が行き詰まっていく過程、近年業界の外から参入している新興勢力とITによるサービスの変革、そして業界の「中」から既存のルールを壊しそうとしている新興企業達。これ一冊読んだだけでアパレル産業を取り巻く状況がなんとなくでも理解できた気がする。気のせいかも知れないけど。

名だたるアパレル企業や百貨店の社長インタビューもあるし、ユニクロやゾゾタウン、メルカリの話も出てくるので話の内容が身近に感じられて理解しやすい。新しい業態や戦略で力を伸ばしている新興企業の紹介もあって良い。業界全体をマクロな視点で解説した後にこうやって企業単位でのミクロな話に入ると解像度が上がるというか、色々繋がる感じがして気持ちが良い。

勢いのある新興企業として紹介されているエバーレーン、エアークローゼット、レントザランウェイ、nutte、TOKYO BASE、ジャパンブルー、ミナペルホネン...などなど、正直一社も知らなかったけどどこも個性的な取り組みをしていて非常に面白いし、普段あまり触れない業界のことを知るのもいいなと思った。読書は良い。

それにしてもなかなかの良書だったと思う。オススメです。

テスト駆動開発入門 を読んだ

テスト駆動開発入門

テスト駆動開発入門

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なぜ読もうと思ったか

ケントベックの書いた本が読みたい!と思ってだいぶ前に買ってずっと放置していた。ので読みました。

どのような本か

ケントベックがどうやってTDDをやるのかを解説している本。本の構成としてはPart 1〜3に分かれていて、Part 1と2は実際のコーディング例、3はパターンの解説となっている。

書評というかレビューというか感想

ケントベックはこうやってTDDやるのか!というのが分かる本。そういう意味では非常に面白い。作りたいシステムに対してどういう風に考えながらテストを書きコードを書いていくのか、その思考の過程を惜しみなく書き連ねているのが面白い。もちろん技術的な解説もあるし、後半はよりテクニカルな話題になっていく。三角測量とかモックとかフィクスチャとかデザインパターンとか。

個人的には、Part 1は面白かったがPart 2はめちゃくちゃ読みづらかった。というのも題材が「xUnitの開発」なのである。「xUnitを使ってテストをする」ではなくて、「xUnitそのものを開発する」である。普段からxUnit(あるいは類似のもの)を使ってテストするのが当然に近くなっている昨今、この題材は混乱を招きやすいと思う。xUnitっぽいコードが出てきたらそれはテストコードかと思ってしまう。でも実際はそっちがプロダクトのコードであってそれを今からテストして…あれっ、今書いてるのはテストだっけ?プロダクトのコードだっけ?みたいな感じになって辛かった。正直あまり内容覚えてない。。

とまあ文句も書いたけれども、TDDのサイクルをケントベックはどのように回すのか、それが知れただけでも読んだ意義はあったように思う。コード例やライブラリに関する記述がちょっと古いなーと思うことは多かったけど、2003年出版なので仕方ない。

その他いくつか面白いと思った部分を引用してみる。

よいエンジニアリングはプロジェクトの成功のうちのおそらく20%だろう。悪いエンジニアリングは間違いなくプロジェクトを沈めるが、普通のエンジニアリングの場合、残りの80%が正しく行われれば、プロジェクトは成功する。この観点から、TDDはやりすぎである。業界内の標準よりも欠陥が遥かに少ないコードと、遥かにきれいな設計を生成する。

これは正直意外だった。「TDDはやりすぎである」と感じている人は多いと思うが、ケントベック本人も(ある観点においては)そのように思っていたのである。なるほどなー。

TDDを開始することで、筆者自身のプラクティスのストレスが遥かに少なくなった。全てを1度に心配する必要がなくなった。このテストを動作することができれば、残りのテストも動作させることもできる。チームメイトとの関係が肯定的になった。ビルドを壊すことがなくなり、チームメイトは筆者のソフトウェアに基づいて動作することができた。システムのユーザも肯定的になった。システムの新規リソースは機能追加だけを意味し、古くからあるバグの中から新しい多くのバグを識別する必要はなくなった。

マジかよTDDすごいなおい。こんな経験してみたいものです。

その理由はテスト駆動開発で作業すると、1度に1つのボールを空中に投げているかのような感覚が得られるからだろう。そして、そのボールだけに集中して、本当に良い仕事を行うことができる。新機能を追加するとき、よい設計かどうかは気にしない。できるだけ容易にテストをパスさせるだけだ。リファクタリングモードに入ると、新機能の追加のことではなく、正しい設計にすることだけを心配する。どちらの場合も、1度に1つのことだけに集中する。その結果、1つのことをよりよくすることに集中できる。

なるほどなと思った。ちなみにこの文章はマーチン・ファウラーによる後書きからの引用です。

その他、付録2の「フィボナッチをテストだけから導出する」がとても良い。TDDが美しく適用される例として素晴らしいと思う。

最後に。正直に言うと、文章が読みづらくて常に辛さを感じていた。具体的に何故かはわからないけどキツかった。和訳の仕方との相性があるのかも知れない。

よくよく調べてみると「テスト駆動開発」と言うタイトルで2017年に新版が出ているようなので、こちらを買った方が良さそうです。翻訳はあの和田卓人さんだしきっと読みやすくなっていると思う。付録に古い記述をカバーするような内容もあるらしいし。未読なのでリンクは貼りません。

一応、こっちの版のメリットとしては中古本が激安で手に入ることでしょうか。金銭的リスクを極限まで下げたい人はこっちを買ってみてもいいかも知れません。

次はXPの本でも読もうかな。